80歳

今日は母の80回目のお誕生日。

父も舅も姑ももういない、最後の親の母なのだ。

朝のうちにおめでとうの電話をする。

電話を取ったのは母と同居している私の弟の下の子だった。

その甥っ子は今年高校受験で無事合格をしていた。

母に電話を代わる前に合格おめでとうと言うと照れていた、甥っ子と少し話をしてから母に電話を取り次いでもらう。

母にはお彼岸に行くからプレゼントはその時持って行くからと伝えていた。

そのせいか私から電話があるとは思わずにいたらしく随分喜んでいる様子だ。

母は「今ね、誰もおばあちゃんのお誕生日覚えていないからパパ(亡くなった父)にお線香あげておばあちゃんも大台に乗ったんだよ、80歳だよ、って教えていた所なんだ。」と言っていた。

弟家族はおばあちゃんのお誕生日を忘れている訳では無い、きっと夜にはケーキが出てきてみんなで食べると思うのだ、いつもそうしていると聞いているから。

何よりこうして私が呑気にしていられるのは弟家族が年老いた母と同居していてくれるおかげ。

1年に1度お誕生日のプレゼントを贈るよりもずっと大きなのプレゼントだ。

 

いろいろ話をしていたら母が30年ほど前に癌になりもう死んでしまうところだったの話しになり母が泣きだしてしまった。

そんな事も有ったねと相槌は打ったけれど、まだまだ元気だからもう暫く死にそうには無いよと言って電話を切った。

弟の話によると家で1番元気なのは母だと言うのだ。

自分で野菜を作りそれでみんなのご飯を作りそして1番食べる。

その上誰も聞いていないのに良く喋る、うるさいぐらいというのだ。

そう言えば遊びに来た時もそんなに食べないよと言って1人前をぺろりとたいらげ、そしてよく喋っていた。

お迎えが来るのは当分先の気配だ。

 

だけど母には私よりは先に死んでほしいと思っている。

というより母より先には死ねないなと思うのだ。

私が先に死んだらどれほど母が悲しむか分からない、だから先には死ねないのだ。

最後の親の母を送って、それから私は死なないといけない。

死ぬ時に時間と場所は選べないのに最近はそんな事を考えている。

母も私も随分と歳を取ったということか。