おとうさんの異動の噂がチラホラと出て。
少ししたらその上書きの噂が出る頃だけど、何処からもそれが聞こえてこなくて。
異動先は最初に出た噂の通り決まったようだ。
噂の通り異動が決まったということは、一般的にいえば出世だ。
それなのにおとうさんは家で文句を言う。
それは納得出来ないだとか、どうしていつも俺ばかり貧乏くじなのかとか。
偉くなりたいのかなりたくないのか無職の私には分からないけれど、その責任の重さが分かるからこそ怖さに震えるのだろう。
偉くなっても辛いしヒラのままでも辛い、サラリーマンは因果な商売なのだ。
そこで異動の内示まではもう少しあるから、その間にイライラしているおとうさんの気持ちをアゲることにする。
今日は新しい通勤靴と一杯入る名刺入れを買ってきたのだ。
名刺入れはちょっと高くて12,100円、見た感じもお洒落だし名刺も沢山入りそうだ。
配属先は鬼のように名刺を配るらしく、沢山入るのが欲しいんだよねと言っていたから。
新しい高級な小物を買って気分をアゲて、内示の日を待とうと思う。
内示になったら多分親戚が10倍ぐらいに増えると思う、そのぐらい重い配属先なのだった。