君の名は  感想

1月3日放送された「君の名は」、観客員数や海外でも話題になるなど若い人を中心に知らない人が居ないぐらいの人気作がお正月に放送されるというのでワクワクしながら見た。

ヒット中に映画館では見ていなかったけれど、高校生の男の子と女の子が入れ替わり遠く離れているけれど相手を見つけ出すラブストーリーだという事は聞きかじりで知っていた。

知っていたというよりはそんな話だと思っていた。

 

映画を見始めるとテレビやネットで流れていた情報通りに映像がきれいで、東京ってこんなに美しかった?と思ったりした。

登場人物も可愛いし今風の小道具も効いていて、だから流行ったんだなあと思ったりもした。

 

けれど中盤以降その思いは一気にしぼんだ。

 

ネタバレになるけれど、二人が入れ替わる理由の彗星の落下事故がどうしても震災に重なってしまったのだ。

それも福島を襲った原発事故に。

上の子によると甚大な被害が出た宮城県名取市でこの映画の着想は得たみたいなんだけれど多分壊滅的な被害が出た閖上(ゆりあげ)浜のこと、でも私は福島の原発事故を彷彿としてしまったのよね。

立ち入り禁止になっているその錆びた通行止め、死んだ土地に誰も戻っていない故郷、今もまだある福島の風景だ。

そんな印象を持ってしまったから、その後のストーリは私の中ではどうでもよくなった。

結局二人は彗星の事故の歴史を塗り替えまた巡り合えるんだけど、そんなことどうでもよいのよ。

もし、この子たちの入れ替わりが違うエピソードで彩られていたら、きっと素敵な映画だったなと思えたんだろうけれど。

震災と、塗り替えられた出来事と、作り話なんだからという思いと、頭の中を色々な思いがグルグル回る。

 

そして神職の宮水家が守る言い伝えと御神体

一葉おばあさんと三葉と四葉が3人で御神体が祭られている山に登る所。

着いた先は噴火口だった、私にはそう見えたのよねカルデラみたいな。

でもその後の展開から糸守湖が彗星が落下してできたという事が分かり、それならあの噴火口と思ったところはクレーター。

そのクレーターも彗星が落下して出来たところだったのよね。

 

根底に流れるストーリーとして千年ごとに起きている彗星の落下事故が有る。

二千年前に落ちた彗星で大きなクレーターが出来き、それを語り継ぐために彗星の核が御神体となり宮水家がそれを守ることになったというもの。

ところがその千年後にまた彗星が落ちてきて今度は糸守湖が出来た、けれどあまりの惨事に言い伝えの意味が分からなくなってしまう。

けれど宮水家は御神体と言い伝えはその意味を知らずに引き継いできた。

そして今また彗星はやってきた、千年の時を経て。

今度こそ惨事を防ぐそのために瀧君と三葉の入れ替わりが起こった。

入れ替わりが起こって糸守の人々は救われた。

 

千年に一度繰り返す惨事、そうそれは紛れもなく東日本大震災だ。

歴史や地質を調べると千年毎に大地震が起き大津波は打ち寄せているという、人間には止めようもない大惨事。

でも実際には入れ替わりなんて無いし、津波で行方不明になっている人たちも戻っては来ない。

 

 

そしてこれからの千年後。

福島の壊れた原発はどうなっているのだろう。

何の意味があるのか分からない遺跡となってそこにあるのか。

それとも何事も無かったように綺麗な浜辺になっているのか。

いま生きている私たちに千年後のその風景を見ることは出来ないけれど。

 

 

あの日大津波が来た宮城県七ヶ浜の海。

この海を見ると思う、あの日が夢であったら良かったのにと。

今は何事も無かったように静かな波が打ち寄せているから、尚更に。