叔父さんから電話があった。
この叔父さんは舅の弟。
去年の秋に引っ越して来た叔父では無い。
内容は舅の葬儀の際に葬儀委員長をしていただいた方が亡くなったというもの。
お葬式に参列出来るか、もし出来ないときには自分もお葬式に行くので香典を立替えようかと言うものだった。
父が亡くなったのはもう20年も前の事、葬儀委員長がどんな方だったのかもお付き合いが無くて分からない。
おとうさんは仕事も忙しくて(出張先にその電話があった)手短に叔父さんに香典の立替を頼んだらしいのだ。
ところが昨日の夜またそのことで電話がかかってきた。
そして立替の確認をすると、次に私に電話を代わってくれと言うのだ。
話しは済んでいるはずなのに何かなと思ったら、叔父さんの奥さんの話になったのだ。
奥さんは若年性アルツハイマーの診断を受けている。
でも話をすれば内容も分かって、1人で家に居ても電話に出たり自分の事をこなしたりはしていたようなのだ。
ところが、年末あたりからその症状が進んで夫の叔父さんの事を「どなたですか」と言い始めたという。
前々からデイサービスに通ったり散歩に出掛けたりして体を動かすようにしたら良いですよと勧めていたけれど叔父が嫌がってずっと家の中で介護をしていたのだ。
そしていよいよ叔父では介護できない状態になってしまったらしいのだ。
何故そのことを自分の甥っ子には話さずにお嫁さんの私に話すのか良くは分からない。
甥っ子には心配かけたくなかったのか、それとも女の私の方が話し易かったのかどうなんだろう。
どうせお見舞いに来ても誰の事も分からないから来ないでねと叔父は言っていたけれど、それも本心なのかどうなのか。
叔父のところのには子供がいない。
その上力になってくれるだろう兄弟は殆ど亡くなり、残っているのはくも膜下で話が出来ない妹とパーキンソンでよちよち歩きの弟だけなのだ。
そんな諸々の事を話す相手がいない、愚痴も文句も言う相手がいないのだ。
叔父の家はまるで高齢化社会の日本の縮図のようだ。
出張先にかけた電話はお葬式の連絡よりもきっと叔母の事を伝えたかったんだと思う。
色々な事を私に話したくて電話してきたのだと思うのだ。
誰かに伝えたい、誰かに伝えなくては。
そんな思いで電話をかけてきたのだろうけれど。
叔父の話を色々聞いて、お酒飲み過ぎないでと注意して、1人で大丈夫かと心配をして。
ただ話を聞いて欲しかった叔父の話し相手になって強く思った。
子供がいないというのがこんなに不幸な事になってしまうなんて。
昨日の夜は電話を終わって暗い気持ちで眠りについたのだった。