路銀が無い

子供たちが二人とも大学生だった頃学費の足しに銀行でパートをしていた。

お客様からの電話に答えるオペレーターだ。

その日いつもと同じように電話に出るとどこかアメリカかイギリスの方からの問い合わせだった。

 

「ロギンデキマセン~、コノマエハダイジョウブデシタ~、ナンデスカ~。」

英語訛りの電話の声、いつもはかかってくる電話の殆どが日本人からだから、外国の方と言うだけで緊張してしまった。

その上何が言いたいのか理解できない。

内心『路銀と言えば旅のお金、外国の人なのに随分と古い言葉知ってるな、日本人でも今時そんな言葉使わないよ。』と思いながら話を聞いていった。

そんな私の事は関係なく外国の方はまくし立てている、「ロギンデキマセン~」と。

『こんなに路銀路銀と言っているんだからトラベルローンでも申し込みたいんだろうか?』いつまでたっても話が噛み合わない。

ところが暫く話を聞いて英語訛りの言葉に慣れてくると突然こんなふうに聞こえた。

「ログィンデキマセン!」

『え!ログィン?路銀じゃない?!』1回英語耳になるとなんかスラスラ聞こえてくる。

「インターネット支店にログインしようとしているのに何回ログインしても入っていけないどうしてなんですか?」と言っているじゃないか!!!

 

いつも英語は全くしゃべれない。

もちろん今回のお客様も日本語で話してはいた。

でもあまりにも発音が良すぎて聞き取れなかったのだ。

いやーここまで聞き取るのに随分と時間が掛かってしまった、済みません。

その後正しいログインの仕方を説明してその電話は終わった。

 

路銀とログィン、電話で聞くととっても似ている。